薩摩琵琶 武部丈水の活動を紹介しております。

100年前の詩文と現代文

今稽古している「屋島の誉」より

うめはかんくをへてせいこうをはっし 
ひとはしちにいりてたいこうをたつ

この語りを聞いて、熟語を連想される方はどのくらいいるだろうか?
原文は、
梅は寒苦を経て清香を発し
人は死地に入りて大功をたつ
なのですが、この後に続く
「せんしんばんく=千辛万苦」も聞いただけではわかりにくい。

うめはさむさをへてかおりをはっし
ひとはしぬおもいでせいこうをおさめる

私の現代語訳では、格調が下がるかもしれないが、少しだけわかりやすくなる気がする。
落語は古典も現代語で語っているし、創作も盛んに行われている。
琵琶と言えば平家物語というイメージがあるので、平家物語の名場面を語り継いでいくのは大切。けれども、もう少し聞き手がわかりやすい表現を工夫することも必要ではないかと思うのです。
ヨーロッパ音楽の最高峰、ベートーヴェンの第九も、古いドイツ語では今のドイツ語とかけ離れているために発音が直されたり、日本語訳が工夫されたりしています。
琵琶楽も聞き手に表現のよさをわかりやすく伝える工夫を考えてみたい気がします。

2023/4/3